【道徳の授業】監督のバントのサインを無視して二塁打を打った星野君は次大会を出場禁止に 結果が良くても約束を破ったことに変わりはない

「私たち教員は日ごろの係や委員会活動、

 行事などを通じて、通知表の総合所見欄

 で子どもたちを評価してきました。

 そのうえ、子どもの『道徳心』を

 どう評価したらいいのか、

 相当悩みました。

 小中学校の多くの教員が多忙で連日、

 過密勤務状態です。

 いきおい、評価の文例などマニュアル化

 を望んでいる先生方も増えています。

 子どもの内心に踏み込むばかりか、

 教員たちの側も思考停止するように

 仕向けられているように感じます」

道徳で定番となっている

 

「星野君の二塁打」

 

という小学6年の教材も

教員たちの悩みの種だ。

バッターボックスに立った星野君に、

監督が出したのはバントのサイン。

しかし、打てそうな予感がして反射的に

バットを振り、打球は伸びて二塁打となる。

 

この一打がチームを勝利に導き、

選手権大会出場を決めた。

だが翌日、監督は選手を集めて重々しい

口調で語り始める。

 

チームの作戦として決めたことは絶対に

守ってほしいという監督と選手間の約束

を持ち出し、みんなの前で星野君の行動を

咎める。

 

「いくら結果がよかったからといって、

 約束を破ったことには変わりはないんだ」

 

「ぎせいの精神の分からない人間は、

 社会へ出たって、社会をよくすること

 なんか、とてもできないんだよ」

 

などと語り、星野君の大会への出場禁止を

告げるシーンが展開する。

個人プレーとチームプレーのどちらを

優先すべきか。

 

悩ましいテーマだが、教材は迷うことなく

前者を断罪している。

 

現役の小学校教員で

 

『「特別の教科 道徳」ってなんだ?』

 

の著者の一人、宮澤弘道氏はこう語る。

「戦時中の国民学校の話かと思って

 しまいます。

 人権を侵害していながら、道徳の教材

 として扱われている典型例です。

 道徳はかつて『修身』が筆頭科目で

 あったような位置づけになるのではと

 懸念しています」

教科化のきっかけとされたのは、

11年10月に起きた

 

「大津市中2いじめ自殺事件」

 

だ。


「中央教育審議会の唱える

 『いじめのない学校』

 という方針は確かに切実な要求で、

 保護者の期待度も高い。

 しかし、道徳が本当にその期待に

 応える教科になるのか」

都内の小学校教員)

ほとんどの教員は週に45分間の道徳の

授業でいじめがなくなるとは考えて

いないだろう。

 

北海道教育大や東京学芸大など4大学が

15年夏、教育改革について公立学校教員

を対象にアンケート調査を実施、

5373人から回答を得た。

 

道徳の教科化に

 

「反対」

「どちらかといえば反対」

 

と回答したのは小学校約79%、

中学校約76%に上った。

 

理由は業務負担の増加と、

やはり、子どもの内面を安易に評価する

ことへの疑問だ。

もちろん、正式な教科になる前から

道徳の授業はあった。

だが、成績を付ける必要がなく、

副読本を使うも使わないも基本的に自由。

授業は個々の教員の裁量で行われてきた。

元小学校教員で自然科学教育研究所代表の

小佐野正樹氏が語る。

中略

昨年3月の小学校道徳の教科書検定に

合格した教科書の中には、

 

「国旗や国歌を大切にする気もちの

 あらわし方」

 

と題して、日の丸と卒業式の写真を

掲載して

 

「き立して国旗にたいしてしせいを

 ただし、ぼうしをとって、れいをします」

 

などと記述したものもあった。

 

教育出版の教科書だが、

 

「下町ボブスレー」

 

という読み物では、東京都大田区の町工場が

開発したボブスレーに乗り込んで

ピースサインする安倍晋三首相の写真が、

何の脈絡もなく掲載されている。

小佐野氏はこう言う。

 

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